第一章‐希望、絶望

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 八雲悠(やくもゆう)、現在地、オカルト研究部部室。  僕が彼女たちに死因の調査を依頼してから、一か月。ようやくこのオカルト研に馴染んできた。    出合った当初は、そりゃ酷かった。覗きだと勘違いされたかと思えば(まあ覗きみたいなもんだったけど)、幽霊だと分かった途端騒ぎ出し、最終的には僕、完全に蚊帳の外だった。    まあでも、どうにかこうにか依頼を受けてもらうことができ、今はこのオカルト研に身を置かせてもらっている。  僕がこの一か月を振り返っていると、教室の扉が開き、一人の生徒が入ってきた。   「あ、もう来てたんだ。今日は早いわね」    この女生徒こそが、最初に僕の存在に気付いた少女で、名前は月夜由宇(つきよゆう)。僕と同じ読みの名前で、このオカルト研究部のメンバーの中でも最も僕と親しい存在だ。  長い黒髪は綺麗に背中まで流れ、思わず見とれてしまうほど。……最初に見つかったとき、実はこの髪に見とれていたというのは秘密だ。    ちなみに彼女、僕より一つ上で、もちろん霊視可能。聞いた話によると、UFOの存在を科学的に証明することが夢で、そのためにオカルト研究部に入ったらしい。  そして今は、部長にまで昇格しているのだとか。    声をかけてきた部長は、そのまま鞄を長机の上に置いて、パイプ椅子に腰掛けた。   「部長こそ早いですね。なにかあったんですか?」    他のメンバーが集まらないとこの部は活動を開始しないため、その間の暇つぶしも兼ねて僕は訊いた。   「ん? わたし?」   「他に誰がいるんですか?」   「いるかも知れないわよ? 見えてないだけで」   「幽霊である僕に対して、その返しはいかがなものかと……」    ていうか、自分も見える人なのに……。部長は、たまにこういう返しをする。まあ、面白いからいいけど。    割とクールビューティである彼女は、僕と仲良くしてくれるだけでなく、一番僕のことを考えてくれている。    依頼の件も、部長は受けることを前提にして内容を聞いてくれていた。
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