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「紫さん、交代だから上がっていいよ」
午後七時。
早百合にそう声をかけたのは、木林森(こばやし、しん)。
早百合のバイトの先輩だ。
二十一歳(早百合の三歳上)の大学生である。
「あ、はい。じゃあ、お先に失礼しま~す」
外では努めて普通の女子高生として振る舞う早百合。
家庭の、母の事を誰にも感づかれない為の振る舞いであったし、外でくらいは母の事を忘れたかった故の振る舞いでもあった。
ロッカーで着替えを済ませた早百合。
そして携帯電話をポケットに仕舞おうとして、携帯電話のLEDがチカチカと光っているのに気がついた。
また、母からの「~買ってこい」だのという使いっぱしりメールだろう、とため息をつきながら携帯電話を開く早百合。
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