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バイト先であるコンビニエンスストアを出た早百合は、真っ直ぐ家に帰った。 帰りたくもない家ではあるが、さっさと帰らなくては母がまた暴れ出す。 別にそれが怖いわけではない。 ただ、面倒なだけだった。 もう、早百合は母に傷つけられる事には慣れてしまっていた。 肉体的にも、精神的にも。 それは、強くなったのではない。 それは、鈍くなったのではない。 むしろ、弱く。 むしろ、鋭く。 早百合の心は、変化していたのだった。 家庭の問題についての関心はあまりに弱く。 自身の心身の危険感知能力はあまりに鋭く。 ならざるを得なかった。 そうでなければ、今頃早百合はこの世にいなかっただろう。 母に殺されているか、自身で殺していたはずだ。 今、早百合はそんな世界を生きている。 .
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