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トンネルの中はじめじめと湿気が多く、ひんやりとしていた。 「…中はちょっとすごしやすいかも…」 暑さに弱いため、丁度良い涼しさのトンネル内を快適に感じた早百合がぼそりと言う。 「ちょっとちょっと、本気で言ってないよね早百合?」 ぼそりと言ったのに、それを聞き逃さない香奈々。 目ざといだけでなく耳も良いようだ。 「…それにしても長いね、このトンネル」 もう五分程歩いているが、出口の光さえ見えない。 「…まさかまさか、地獄まで続いてたりして…」 香奈々は冗談っぽく言う。 だが、顔には真剣味があった。 「や…やめてよ」 否定する早百合。 しかし、早百合は内心思ってしまった。 有り得るんじゃないか、と。 あんなメールで呼び出された場所だ。 もしかしたら、と思ってしまう。 もしもこのまま地獄に着いてしまったら、などと。 「…あ、早百合早百合!」 と、いきなり大きな声を出す香奈々。 早百合が顔を上げると、小さく光が見えた。 「出口…?」 「そうそう、そうだよ!やっと着いたね~」 そう言いながら歩みを早める香奈々。 それと対象的に歩みを止める早百合。 「ん?どしたどした、早百合?」 香奈々が歩みを止めて振り返る。 .
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