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「やあ、初めまして」 田中と呼ばれた男性は爽やかに早百合達に話しかけてきた。 「僕は田中彼方(たなか、かなた)。刑事です」 彼方と名乗った男はそう言い警察手帳を早百合達に見えるように開いた。 そこには確かに田中彼方の名前と男性の写真。 「け、刑事…?」 刑事と聞いて顔を強ばらせる早百合と香奈々。 「ああ、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。ちょっと話を聞きたいだけですから」 爽やかさを保った笑顔で言う彼方。 「えとえと…あの人も刑事さんなんですか?」 香奈々が中年男性を指差して尋ねる。 「人に指差さないの」と早百合が小声で注意した。 「ええ、そうですよ。あの人は桜井桜亥(さくらい、おうがい)、僕の上司です」 彼方は丁寧に説明する。 「それで、なんですが」 と、そこで話題を自分達から早百合達に移す彼方。 「あなた達は?なぜこんな所に居るんでしょうか?」 その質問に早百合と香奈々は顔を見合わせて、頷き合った。 「話そう」という意志を確認しあったのだ。 .
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