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「危ねぇ!」 桜亥のその声を合図に、全員が左右に逃げる。 「…うわっ!」 しかし、そこで左様が転んでしまった。 しかも、その地点は運悪く飛んでくるブランコの真正面だ。 「兄貴!」 右様は踵を返し、左様を助けに向かう。 だが、明らかに間に合わない。 右様は駆け寄りながら手を伸ばす。 だが、まだまだ届かない。 右様は必死に左様の元へ走る。 だが、ブランコはそれより遥かに早い。 「…っ!」 そして、ブランコは鈍い音を立てて衝突した。 何もない地面に。 全員が動けなかった。 その中、右様は左様の元へ駆けた。 だが、もう一人だけ、左様の元へ駆けた者が居た。 「…」 それは、工事用ヘルメットの男、厳だった。 厳は、右様よりブランコより早く左様の元へ駆けつけ、左様を抱きかかえてブランコの正面から助け出したのだ。 否、それは抱きかかえたというより、左様ごと滑り込んだといった感じだった。 .
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