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「ほらほら、頑張れ早百合!アパートが見えて来たよ!」 と、香奈々が指差す方には、あまり綺麗とは言えない、むしろボロ、いや、ボロボロと言った方が正しいようなアパートがなんとか立っていた。 台風でもくれば吹き飛びそうだ。 「…」 しかし、香奈々の声に応じる事さえ出来ない程、早百合は疲弊していた。 関東でこうなのだ、早百合は絶対に沖縄には住めないだろう。 というか北海道に住んだ方が良さそうだ。 「…」 「…」 話しても返せない早百合と、話しても独り言になってしまう香奈々。 自然、二人とも無言になる。 かたや、死にそうな顔をする早百合。 かたや、そんな早百合に付き添う香奈々。 それは、一緒に下校している女子高生というより、祖母の散歩に付き合う孫という画に見えた。 .
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