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「待ちな!このクソガキ!」 そんな声を背に、早百合は家を飛び出した。 早百合は確かに暑さに極端に弱い。 暑いのは大嫌いだし、日光が弱まるまで外に出たく無いのもまた事実だ。 しかし、早百合の帰宅の足が重い理由はそれだけではない。 むしろ、この母が居る家に帰りたくない、と言う理由の方が主なのだ。 香奈々には、その事は言っていない。 誰にも、その事は言っていない。 あれが自分の母であると認めたくなかった。 自分があれの子であると認めたくなかった。 だから言わなかったのかもしれない。 香奈々にそんな事実を知られたくなかった。 誰にもそんな事実を知られたくなかった。 だから言わなかったのかもしれない。 .
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