・壱・

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 二時間目が終わると私は紅花と一緒に食堂に向かった。  「あぁ~もうほんと最悪だよ~」  「何が?」 「さっき私、立たされたでしょ?あれグラウンドにいた先輩にばっちり見られた…」 「アハハ…!それは最悪だね。明智先輩に失態を見せちゃったわけね」  笑いが止まらないと言いながら私の肩を叩いた。  「もぅ…!」  ちょうど私達が食堂につくと体育が終わった先輩達が校舎に入ってきていた。   うわ!今先輩に会いたくないよ!どっかに隠れなきゃ!  キョロキョロと辺りを見回すが隠れることができそうな所は……なぃ!   どうしようかと齷齪していると、昴先輩が私の名前を呼んだ。  「桔梗!」  私はその声に振りかえる……  ぅぅ……  恥ずかしいくて顔を見れない。  「これ、あげる。授業始まる前に買ったからもうぬるくなってるけど」  そう言って先輩が私の手に渡したのはパックジュースだった。     顔を上げる。 「今日、俺部活あるけど待ってて。一緒に帰るから」 「……はぃ!」  私がそう答えると先輩は友達と一緒に自分の教室へと戻って行った。   一部始終を見ていた紅花は、先輩が去った後に一言。  「あんないい男と付き合ってる桔梗が羨ましすぎ!!」   先輩から渡されたパックの紅茶から【気にするな】って言われている気がした。 「ほんと……いい人だよね!アハッ」 「自分で言うなよ!」    私達は笑いながら食券を買いに食堂に向かった。  .
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