・零・

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ダッダッダ―…   城の廊下を急ぎ足で進んでいる若者がいた。顔は蒼白し、今にも泣きそうな顔をしていた。   ある部屋にたどり着くと、中にいる人物の了解を得てから入る。すると一人の初老の男が畳の上で目を閉じて正座をしていた。   若者が入って来たのを確認すると初老の男は目を開き言った。  「―…逝ったか」   それを聞いた若者はその場に泣き崩れた。  「先程…先程…笛の音が途切れました…」  若者はそれだけを告げると更に声を押し殺しながら涙を流した。  「…まだ一四ぞ…帰蝶…」  そうポツリと呟いた初老の男は静かに涙を流した。   余りにも早い娘の死に二人はただ涙を流すだけだった。  .
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