・壱・

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-*- 「ありがとうございました」  先輩は車から降りるとお礼を言った。「ああ」とお兄ちゃん達はそっけなく応えると車を走らせた。  「先輩さよなら!また明日!」  手を振り私達は別れた。  「彼とはいつから付き合っているのですか」 「3ヶ月ぐらい前から」 「最後の一線は越えてませんよね?」 「最後…?」 「その様子じゃまだのようですね。……よかった」  最後の一線?……っ! 「やってるわけないよ!!」 「反応おそすぎますよ」  なんなのこのお兄ちゃんは!!    -*- 「ただいまぁー」   ってだれもいないか。……ん?  「おかえりなさーい」  お母さんの声が奥からかえってきた。ふと足下に目をやると玄関に靴があった。   私は急いで家に上がり、リビングに入ると、キッチンで夕飯の準備をしている母の姿があった。  「久しぶりね。桔梗。あら、我娘ながら更に可愛くなったわね。彼氏でもできたのかしら?水月と葉月に邪魔されてない?」  私のお母さんは世界中をまわっているプロのカメラマン。こうして会うのは本当に久しぶりだった。  「彼氏、できた」  久しぶりの親子トークに、なんだか恥ずかしくなる。  「まぁ!どんな人?」 「水月お兄ちゃんが車に乗せるぐらいの人!」 「嘘!?それはかなりいい男なのね?やったわね!でもパパよりいい男はいないはずよ」 「お母さん…!」  お父さんは私が生まれてすぐに亡くなったから全く記憶にない。しかも父が亡くなってすぐに家が火事になり、お父さんの写真など、姿が残るもの全部焼けてしまったらしい。なので私は一度もお父さんの顔を見たことがない。 「別に……認めたわけではありませんよ」  車の鍵を閉めてから入ってきたお兄ちゃん達。  「かあさん。今回はいつまで家に?」 「明日」 「明日!?」 .
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