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――…桔梗さん 私の代わりに 私の愛した人達を 愛して ――…
誰?……でもこの声、私の声じゃない?
-*-
「――…姫様!?気がつきましたか?」
水月お兄ちゃん?
「……どうしてお兄ちゃんが私の部屋にいるの」
「ここは姫の寝室ではございませぬ」
姫って誰のこと言ってるの?
……!!さっきのお兄ちゃん達とのやりとりは夢じゃなかったの?私はゆっくりと身を起こしたが座ったまま兄に言った。
「まだ続いているの?いい加減にしてよ。私は姫なんて名前じゃない。桔梗っていう立派な名前が……!」
私は威勢よくお兄ちゃんに文句を言っていたが兄のあまりにおかしい格好に目が入ってしまった。
「なにその格好……」
お兄ちゃんの服装は、いつもはいてるジーンズとかのラフなものではなく、時代劇とかに出てきそうな着物だった。
「これがこの時代の正装にございます。それにこれは夢ではなく現実。無理矢理な形でこちらに連れて来てしまい、申し訳ありません。しかし急がねばならない理由があったもので……」
「『こちら』?」
「今、私たちがいるのは平成の世ではありません」
「……へ?」
「戦国時代と申せばお分りになりましょう」
戦国時代?
「アハハ!そんなはずないよ。普通に考えてありえない。タイムマシンなんてまだ開発されてないよ!常識はずれも甚だしいっての」
「常識……しかし現に私達は平成の世から戦国の世へと移動したのです。窓から外をご覧ください。そうすれば納得いくはずです」
私は部屋にあった窓に近づく。窓といっても小さな小窓で頭一つが出るくらいのものだった。私はその窓に頭を突っ込む。
そして私はお兄ちゃんの言うことを信じないわけにはいかなくなってしまった。
窓から見た光景に私は唖然。今、私がいる場所は……お城だ。メルヘンチックなお城じゃなくて、日本独特の建造物。外には堀があり、日本史の資料で見たお城にそっくりだ。
「信じないわけにはいかなくなりましたでしょう?」
水月お兄ちゃんの黒い笑顔が……出た。
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