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気配は十以上。子供は完全に狼の群れに囲まれていて、すべてを無傷で終わらせることは無理そうだった。彼女は大きく溜息をつき、群れの中心へ飛び込んでいった。
木に背を預けて座り込んでいる少年を庇うようにして立つ。背負ってきた弓は使わず、ナイフを取り出して構えた。満月なので少しは明るいが、闇の中の気配を睨む。
「動かないで。」
少年にそう声を掛けて、自分も微塵も動かない。狼は賢く、そして臆病でもある。仲間を犠牲にしてまで獲物を捕らえようとは思わないから、一匹を仕留められる位置にいれば襲ってはこない。しかし隙を見せたら、そこで終わりだ。
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