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唇を尖らせる高耶にくすくすと笑った直江は、ふとあることを思いついて、にっと眉を持ち上げた。
「ねえ高耶さん。私は、余裕はこれっぽっちもありませんけどね……」
「けど、何だよ?」
どこか危うげに微笑う直江に、高耶がまだ拗ねている目を向けた。
「余裕はゼロですけど…あのね、『よよく』なら、とてもたくさんあるんですよ?」
「『よよく』…?何それ」
束の間手を止めて告げられた耳慣れない単語に、高耶がきょとんと首を傾げる。それに殊更にっこり笑い、直江は意図的に甘みと深みを増した声でひそっと言った。
「『余る欲』」
「っ!おまっ…!」
意味を察して真っ赤になった高耶が、咄嗟に言葉をなくして声にならない怒鳴り声をあげかける。それを封じるように、直江は素早く耳元に唇をつけて低く囁いた。
「欲望が余るほどあなたが好き、ってね」
腰に響く低音をまともに受けて、高耶の背筋がひくんと震えた。
「ば、ばかや…」
しどろもどろになりながら再び暴れ始めるのをたやすく押さえ込んで、にっこり笑むとウィンクをひとつ。
「愛してますよ。高耶さん」
「……っ」
数え切れないほどの眼差しを受けながら、未だに慣れないその妖しい微笑に、高耶の理性はあっけなく陥落した。
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