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困惑気味に見つめる幸里に佐助は昨夜、四国へ着いた事を話した。
「…幸里は三日も熱で寝込んでたんだよ。」
「――ぇ?三日も……。」
その間、元就が献身的に尽くしてくれていたらしい。
「さすがに疲れたみたいで、今は寝ちゃってるけどね。」
「……そうか。」
悪い事をしたと目を伏せる幸里の手を幸村が握りしめた。
「……無事で良かった。」
幸村の声がすぅーと胸に響く。
「……兄…上……。」
心地よさの反面、この人に大切な者達を消されたと思う気持ちが入り交じり、幸里の身体は小刻みに震えた。
同じ髪の色、目、鼻や唇の形。
どれをとっても瓜二つの私の半身。
幸里は幸村の手に視線を落し、目を伏せた。
「――この温かい手で、陽炎や元親を…………。」
私の半身の冒した罪。
私が出会わなければ、元親は戦を仕掛けなかった。
私が生まれ落ちなければ、この半身も苦しむ事はなかった。
「全て私が悪い。………私が皆を苦しませて…殺してしまった。」
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