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無意識に幸里の口からついて出た言葉に、幸村はビクリと身体を震わせ顔を上げた。
「……ゆさ……と………?」
今、幸里の瞳に何が映っているのだろうか。
深く沈んだ光の宿らない瞳。
「……私が……悪い………。」
力無くうなだれた幸里を幸村は強く抱き締め嗚咽を上げて幸里に詫びた。
「――お前は何も悪くはない。悪いのは某一人!!某がッ――無心に槍を奮った結果だ。お前は何も悪くない!!悪いのはッ……悪いのはッ――――ッ!!」
「………旦那…………。」
涙で言葉が詰まる幸村の背を見つめたまま、佐助は悔しそうに顔を歪め顔を背けると、廊下に出た。
「………誰も…………悪くなんかないってのに…………。何でこんなに苦しまなけりゃならないんだよ。…………幸里…………。」
忍びらしからぬ涙を浮かべ、佐助は空を見上げた。
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