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廊下へ出ると、不意に腕を捕まれた。
「――。幸里!そんな病み上がりの体で何処に行くつもり?」
佐助に捕まえられた腕を振り払う仕草も見せずに着物の胸元を少し広げると、花開いた焼き印を見せた。
「――ッあ……幸里コレ……。」
驚き目を見開く佐助に幸里は軽く頷き、力が抜け手を放した佐助を見つめた。
佐助の口が何が言いたそうに動く。
「……そろそろ……終わりみたいだ………。」
佐助を見つめたまま切なげに目を細め幸里は儚げに笑った。
「……心配するな……兄上の事は恨んでいない。……恨んだ所で、元親も帰って来ないしな。
……それに、兄上が悪くないという事は気付いていた。戦わなければいけなかった事も……分かってる。
……全ては、私が憎しみにかられ……招いた結果。
……元より誰も悪くはないんだ。悪いとすれば……夢を見てしまった私一人。
………これ以上、私の所為で誰かが傷付くのは見たくないんだ。
……分かってくれ。佐助……。」
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