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佐助の腕からゆっくり抜け出ると、幸里は涙目の佐助の顔を見上げ、着物の袖を佐助の濡れた頬に押し当てた。
「……佐助……私の最初で最後のお願い…聞いてくれるか?
………私を……元親の所へ連れて行ってくれ。」
穏やかな顔でサラリと最後と言ってのけた幸里に佐助は苦笑を浮かべ皮肉った。
「………最初で最後って……嫌な事言うなよ……。
……それに……俺がお前の頼み断った事ある?」
佐助の返事に満足そうな笑みを浮かべ幸里はいつも調子で佐助に言った。
「……ないな。それに私は佐助に頼み事をした事は一回もないはずだが?」
「――そりゃないっしょ!!俺様結構頑張ってるのよ?」
佐助が必死で弁解する中、様子を伺っていた幸村が口を開いた。
「……そのっ!!某も行っても………良いだろうか?」
おずおずと幸村が二人を見上げると、幸里は力強く頷き、
「もちろん。兄上も共に……。」
と笑った。
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