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「――ッ!此処って………。」
幸里が驚きの声を上げ、立ち尽くす中、元就は淡々と語った。
「……奴が……いや、長曾我部がもしもの時は此処へ骨を埋めるようにと我に言い残したのだ。
全く……最後まで注文の多い男だった………。」
元就はそう言うと綺麗な青空を仰いだ。
海と空が一望できる見晴らしの良い丘の上に堂々と枝を広げ、まるで幸里を待っていたかのように薄紅色の鮮やかな花を咲かせた一本の桜の木。
皆が感嘆の声を上げる中、幸里はフラフラと墓へ近付くとそのすぐ脇に生えている桜の木の幹に寄り添うように額を擦り寄せた。
「………来たよ。元親………。
……待たせて……ゴメン………。
……ずっと……逢いたかった……
……逢いたかったよ……!!」
幸里は、『ゴメン』と『逢いたかった』を繰り返し、涙を流した。
悲しみに暮れ、噎び泣く中……
一陣の突風が吹き、桜の花をハラハラと散らした。
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