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「警視、現場に不審者はおりません」
「ご苦労。後は適当にやってくれ」
美女ともいうべき女性に指示を受けた一人の警察官は敬礼した後、指示を伝えに去っていった。
上司であろうその女は煙草に火をつけて呟いた。
「派手にやりおって……馬鹿者」
夜更けの深夜。
真中遥南警視は現場を眺めていた。
現場はパトカーが数台とまり、サイレンの赤い光が照らす。
消防車がないし、救急車もない。しかし火災でないにしろ、一種のテロリストみたいなものだ。
周りに野次馬が大勢いるからして、かなりの大事である。
現場のかつて校舎だった場所は半壊といっていいくらい崩れている。
グランドだった場所には教室の机だった破片や教室の椅子だったものが散乱して、場所によっては歩く事すら危険である。
「ごめんってば。意外に強くなってたわ。アイツ」
すたすたと歩きよって、遥南の横で座り込む。シニカルに笑う青年、十音記号は目立つ釣り目が猫目のようにして笑った。対して遥南はしばらく記号をみる。何を思ったか深く溜め息をついて、問うた。
「はぁ……そのようだな。で。持っていかれたのか?」
「まさか。なんとか死守したよ。セラエノ断章の一部がこんな所にあるとはね、はい、これがそれ」
記号が遥南に渡した一見すればただの紙切れである。何枚かにまとまっているので、ただの書類にも見えるが、よく見るとその紙の古さがどんな人間にもわかるくらいの書類だった。
遥南はソレをパラパラとめくった。
「…こんな紙切れで世界が変わるとは思えんな」
「俺もそう思いたいけどね。遥南さん、ニュースみた?」
「何のだ?」
「イギリスでの爆破事故」
「あぁ…それか」
イギリスのとある建物が爆破された。確かただの爆破ではなく、爆破した後、消失した。という奇妙な事件である。メディアではテロリストによるものだとか、その手のタブロイド紙はツングースカの再来と言われている。とにかく政府は主犯に対して全力で捜査に挑み、武力行使を以て壊滅する。と、遥南はニュースでなんとなくみたような覚えがある。
「あれ。多分魔術書でやったヤツだと思うよ」
記号はシニカルに笑って続けた。
「アイツが言ってたよ。会話の流れでね。"科学法典で全て消し去ってもいい"ってね」
「…科学法典?なんだそれは」
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