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「クルーガ火山への経路は二つ、この暗いエルダの森をまっすぐ抜けるか、迂回して明るく安全な海側から回るかだ」
すっかり陽の昇った中、馬に跨ったままラークがそう言って地図をこちらに投げて寄越す。
「・・・・・・で、既にこの気味悪い森の前に既に来てるってことは迂回する気はまったくないと」
「だって誰がどうみたってこちらの方が早いだろう?何を言ってるんだいジョーカー?こちらなら地の利さえあれば最短3日で火山にたどり着けるけど、浜から回れば早くとも5日はかかるんだから!」
「・・・・・・スティだって言ってるでしょうが」
こちらを振り返って、どうして悩む必要があるのかと首をかしげる男をそのまま馬から蹴り落としてやりたい衝動に駆られるのはあたしだけだろうか。
むしろあんたその礼服のままでこの森に入るのか、それもたかだかステッキ一本を片手に。
「私は強いから安心したまえ、まぁ君の幼馴染ほどではないけどね」
彼は杖で帽子を少しだけ持ち上げ、レンズ越しに目を細める。
「・・・・・・じゃぁもしそのツバメたちと鉢合わせたらどうすんの」
彼らがこちらを通っていないと決まったわけではない。
もし鉢合わせでもすればそれこそ修羅場だ。
それなのにこの男は「あぁ、彼か!」とまるで今思い出したように手のひらを叩く。
「それは大丈夫さ、彼らは安全な浜の方を進んでいるからね!」
「どうして分かるのよ?」
眉間に皺を寄せてそう聞き返せば、彼は「だってほら」と馬を下りて下に転がっていた石ころをいくつか拾い上げて、森へ向かって放リ投げた。
「「!」」
石が地面に転がると同時に、その場所の土が大きく盛り上がる。
そして突然ガシャンと音を立てたかと思えば、瞬きもしないうちに石ころも土も、その場所丸ごと、その何かに飲み込まれたのである。
突如地面から現れた、巨大なウサギ捕りのようなそれに、声をなくしていれば、彼はこちらに振り返って笑う。
「こぉんな危険な森、地の利もなく、誰が抜けるっていうんだい?」
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