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色が示す道を辿りながら、同じ景色の中をずっと歩いているような気がした。
絶えない不気味さを漂わせる森は、容赦なくこちらの不安に付け入ろうとしてきた。
本当は、実は一つ色を飛ばしてしまってすでに迷ってしまっているんじゃないか、まだそれに誰も気づいていないだけじゃないのか、なんてことさえ思わせた。けれど、少なくともラークはそんなミスをするようなタイプには見えないし、リウルだって、次の木に辿りつくたびに人が変わったみたいに真剣な顔で方向を確認していた。
けれど、そんな時間が延々と流れると、元々寡黙だったラークだけでなくとも自然と口数が減った。今でも意気揚々としゃべり続けているのはフェスカ・レイトンだ。同じだけ歩いている筈なのに、まるで今水揚げでもされたかのように活きの良さを保っている。
「ねぇジョーカー、君はこの旅の終わりに何があると思ってる?」
「今はこの森で旅の終わりを迎えないことだけを願ってるよ」
苛立ちを隠さないまま素っ気なく言えば、フェスカ・レイトンは、それは心配いらないさと陽気に笑った。こちらは喋る気力さえかすかにしか残っていない。
「頼むから少し静かにしてよ、でなきゃあんたのことを変なあだ名で呼んでしまいそうだ」
「あだ名!いいね!僕には意外にもこれまで友達がひとりもいなくってね!君が第一号になってくれそうだ!ぜひとも呼んでほしいね!」
「友達になりたくないからやっぱりやめておく」
「なんだいつれないね!僕も君のあだ名を考えていたんだけど、君にはジョーカーっていうれっきとしたあだ名があったね!」
「それはなにより。できれば呼ばないでくれると嬉しい」
言葉の足を取られ、黙らせる策も尽き、こうなればラークやリウルと同じく無視を決め込んだが、お構いなしにフェスカ・レイトンは喋り続けた。
いい加減リウルが怒るかと思ったけれど、彼女はラークを完全に避けて口を聞かなかったし、まるでいないような態度を見せた。そんな見慣れないリウルの姿は新鮮だったけれど、長く見たいとは思わなかった。
結局、森を歩き続ける間、フェスカ・レイトンが口にした言葉の中で唯一こちらの気分を盛り上げたのは、「あと半分で森を抜けそうだね!」という、言葉だけだった。
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