第1章

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   「ねぇスティ!今度スティのおうちに行ってもいい?」 突然本の前に顔を出したリウルの言葉に、本から目を逸らすことなくあたしは言葉を返す。 「うち狭いからダメ。」 「そりゃ貴族の家に比べたら庶民の家は小さいって。」 ツバメがこちらに目もくれずに、グラスに口を付けながらそう呟き 「ツバメには聞いてない!」と怒りながら、リウルはまたこちらに向きなおった。 「えー!そんなのあたし気にしないよ?だからお願い~」 あたしが読んでいた本を退かし、彼女は手を合わせてすがるように上目遣いでこちらを見てくる。 小動物のような愛らしい目に一瞬負けそうになったが、ぐっと堪えて、あたしは心を鬼にした。 「ダメ。だってまた稽古サボる気でしょ。」 「うっ、それはその・・・」 リウルは言葉を濁らせて目を泳がせる。どうやら図星だったようだ。
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