第1章

7/23
前へ
/1081ページ
次へ
    「じゃぁ僕はいいんだ?」 横から聞こえた声の方に顔を向ければ、ツバメが勝ち誇ったような顔でこちらに顔を向けていた。   「あんたもダメ、あたしだって仕事があるんだから」 「じゃぁ、いい加減スティの仕事場教えてよ。買い取るから」 ……この金持ちぼっちゃんめ。 綺麗な笑みを見せながら、恐ろしいことをいうツバメに対して、あたしは重い溜息をつく。 そもそも、あたしがこの上流階級の二人に出会ったのはほんと偶然で、その時はまだ、三人共幼かった。 リウルとは、たまたま町での仕事帰りに森で散歩中にお付きを撒いて逃げていた彼女と偶然はち合わせ、悪い奴に追われていると勘違いした自分は彼女を連れて逃亡。 それ以来、彼女とは何かしらと縁がある。 ツバメとは、いつも森でギターを弾きながら歌う吟遊詩人を通じて知り合い、それ以来、何やらよく森にちょくちょく来るようになった。 あたしは最初、この二人の身分を知らなかった所為で、正体を知った時にその場に全力でひれ伏したという過去があったりする。     当然だ。まさか誰も、あんな辺鄙な森にそんな上流階級が来るとは思いはしないだろう。   
/1081ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13024人が本棚に入れています
本棚に追加