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横から聞こえた声に頭を90度右に回せば、そこにはまた見知った顔。
今日は何の厄日なのかその顔も目の前の彼女と同様、こんな平民の居住地には似合わない人物だった。
「・・・ツバメ、あんたいつからそこにいたの」
苦い顔をしてそちらに身体を向ければ、「今」と彼は答えて、嫌味に笑った。
「あーツバメ!!こんなところで何してんのよ!」
「僕はどっかの誰かさんみたいに抜け出してきたわけじゃないからいいんだよ。鍛練も終わったし」
顔を合わせれば喧嘩ばかりの目の前の二人に、ただでさえ仕事後の身体がますます重くなる。
鍛練終わったからって、なんであたしのところに来るんだと言いたい。
まず相手の予定を訊くのが紳士ってものではないのだろうか。
「真面目を自称するなら、こっちの都合を訊きなさいよ」
「知ったこっちゃないね」
偉そうに鼻で笑う彼に、本日二回目の溜息がこぼれる。
相変わらず女にしか見えない目の前の男、ツバメ・ブラッディア。
この小生意気な口調をした彼も、スペードのエースの血筋であるブラッディア家の跡取りだ。
リウルといいツバメといい、どちらもこんな場所へくる身分の人間では無い。
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