12人が本棚に入れています
本棚に追加
レムリア大陸の西の外れにあるカーフという名の町。
大陸を治めるセオニア国の首都からは大分離れた所にあるのだが、地方都市としての役割を担っているため、町にはそれなりの人や物資、活気に溢れている。
その町の中に、多くの人で賑わう店があった。
その店は食べ物を扱っているのだろう。店内から漂う香ばしい匂いが、そばを通る者の鼻孔をくすぐり、店の玄関へと誘う。
その店の玄関には、ミセリア食堂と書かれた看板が立てかけられていた。
看板の前には、匂いにつられたのか、吸い込まれるようにやって来た人影が二つ。
一人は少し短めの黒髪を揺らす、少年にしては大人びて青年といっては幼い、思春期を思わせる風貌の少年。
「ここにするか?」
黒髪の少年は傍らにいるもう一人の人物に問いかける。
その人物は、見る者に月を思わせる、淡く金というよりは黄に近い色合いの髪を、後ろは水色のリボンで束ね、鬢の耳にそって一房の長い髪を胸元まで届かせていた。
「まぁいいんじゃない」
金髪の少女は黒髪の少年に返事をする。
端整ながらもまだあどけなさが色濃く残る顔立ちは、黒髪の少年とは違い、まだ少女という言葉が似合っていた。
最初のコメントを投稿しよう!