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少年が扉を開けると、店内からはたくさんの音が聞こえてきた。
店の奥の方から聞こえる食材を炒める音。家族連れの談笑。恋人らしき男女が語る将来の夢の話。子供の笑い声。
平和を感じさせる音と笑顔に満ち溢れた店。
聞く者に元気を与える音を聞きながら、二人はカウンター席に座る。
「いらっしゃい。お二人さん、見ない顔だな」
この店の店長であろう大柄な男が、カウンター越しに人付き合いの良さそうな笑みを二人に向けた。
「あぁ、今日この町についたばかりなんだ」
少年もそれに明るい笑顔で返すが、少女の方は肘をつき、男と目を合わせることさえしなかった。
「ほうそうか。この町はどうだ?良い所だろ」
だが、男はそれを気にした様子もなく少年に話しかける。
少年はその澄み渡るような藍色の瞳で周りを見渡すと、一つ頷いた。
「平和で良い町だな」
男も同調し頷く。
「おっと、話してて忘れる所だった。何にするかここから選んでくれ」
男がそう言うと、一枚の白い紙が少年と少女の間に置かれた。
紙には、達筆と言って良いのか、下手と言って良いのかわからない字で、色々な料理の名前が書かれていた。
どうやらお品書きのようだ。
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