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次の授業中。
目の前のスクリーンのビデオを見ずに、二人は反対方向を向いたまま座っていた。
長い授業も気がつくと終わり、クラスの人達の帰る波を見て二人も席を立った。
次はお昼。
教室で食べなくてはいけないのだが、百合は桜の手を引いて校庭の桜の木の下の白いベンチに座る。
この白いベンチと桃色な桜が春には綺麗に合う。
「教師と生徒ってさ。漫画やドラマだから上手くいくんだよ。」
「うん。」
「桜の周りには沢山男いるんだよ。もっと身近な人が沢山。」
「うん。」
「私は現実を見てないと思う。桜は恋を知らないだけだよ。」
「……この恋を知るだけでいい。私、好きだよ。」
今まで付き合った経験のある百合にしてみれば、桜のこの恋は現実離れとしか思えない。
「優しさと好きは違うんだよ?教師は生徒に優しくするのは当たり前。」
「わかってるよ。」
「だったら現実見なよ。相手にされるわけないでしょ。」
桜を思っての百合の強い言葉。
桜もそれをわかってる。
だけど、この気持ちだけは譲れない。
「もういい。私は私で頑張るから。」
桜は閉じたままのお弁当を持って、校舎に戻った。
涙が出る。
現実はこうなんだ。
所詮は教師と生徒。
漫画やドラマで増えようと、世間は引いた目をする。
教師も男、生徒も女。
教師も人間、生徒も人間。
そこに恋が生まれる要素は沢山ある。
だけども。
教師や生徒と言う関係は、そんな要素を壊す関係。
そんな現実。
桜も解っている。
そこまで子供じゃない。
だけど。
もう無理なんだと感じている。
好きなものは好きとしか言い様がない。
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