●春音

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「遅い。」 下駄箱には百合が少し怒った顔で立っていた。 「ごめんね。シェイクおごるからさ。」 「プラス、桜の好きな人もね。」 「えぇ。」と笑うと、百合が不思議そうに見る。 「何?」 「顔から首の下まで真っ赤なんだけど?」 「嘘?」 カバンから鏡を取り出し見てみると確かに赤い。 「うん。私に欲情しないでね。」 「しないよ。」と百合に返し、外に出る。 校門から出る時に、何気なく今までいた教室を見ると優が窓の戸締まりをしていた。 ――わかるかな……。 そう思い、手を振ると目線をこっちにチラッと向けて、また窓に戻した。 そして小さく手を左右に二回振った。 「……あははっ。」 小さく笑い声が溢れた。 幸せも胸に溢れた。 少し前を歩く百合は不思議そうに、「桜。」と呼ぶ。 「今日はシェイクでもポテトでもおごってあげる。」 「嘘、いいの?」 「いいよ。さぁ、行こう。」  
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