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真っ青な空の下に続く、どこまでも真っ白な世界。
見渡しても、青と白以外の何も見えない場所に放り出された私は、わけも分からず泣いていた。
戸惑いと、懐かしい場所に戻って来れたという、矛盾した感情が溢れ出てきた。
そうやって座り込んでいる私に、手を差しのべてきた男の子がいた。
いつからそこにいたのだろう。
それは、私と同じ歳位の少年だった。
「君の名前は?いつ生まれ?」
突然に起きた、全く知らない男の子の出現と、唐突な質問に、私は泣くことも忘れて硬直した。
先ほどまで流れていた涙を溜めたままの瞳を大きく見開いて、たどたどしく口を動かす。
「なまえ、は…神山サヤカ…誕生日?は、2月…じゅ…いちにち…」
男の子はそれを聞くと一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに優しく微笑んでこう言った。
「ああ、もしかして君、今この世界に来ばかりなんだろう?
だから泣いていたんだね。
『生まれた日』っていうのは、下界での誕生日じゃないんだよ。
今来たんなら、今日が君の生まれた日だ。」
私はその意味がよく分からなかった。
私が生まれたのは確かに2月11日だったし、今日は私の死んだ日。
つまり、命日だというのに。
しかし彼の笑顔や一つ一つの言葉には温かみがあって、会ったばかりだというのに、私の心は安心しきっていた。
男の子は真っ白な寝間着のような服を着ていた。
ふと見ると、自分も真っ白なワンピースを着ていることに気づく。軽くて柔らかくて、肌触りの良い上質な絹のような素材だった。
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