天国の花

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「そう。早く見たいな」 「こんな花が一面に咲いている場所があるから、君に見せてあげるよ。とても綺麗だよ? この花は、ここに一人じゃあ寂しいだろうから、その場所に連れて言ってあげようね」 そう言うと彼は、花の根本に手を差し入れ、まるで雲でもすくうように、花を手のひらに乗せた。 花のあった場所にはぽっかりと小さく穴が空いた。 少年はすぐに「行こうか」と私の手を取り歩き出したのでよくは見えなかったが、その穴はゆっくりとしぼみ、あっと言う間に元の白い地面に戻った。 歩きながら後ろを振り返った私の目が正しければ、その穴が消える直前、一瞬だけ下の世界が見えたような気がする。 もしかすると、この真っ白い地面は、とても薄くて柔らかいものなのかもしれない。 私は下に落ちてしまいはしないかと急に怖くなり、自分の手を包んでいる少年の手を、ぎゅっと握りしめた。
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