緋に染まって

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揺れた枝を見たが、何もいなかった。 男は不信に思ったが、また歩を進めようと向きをかえる… そのときー… 「…こんばんは…」 いきなり後ろから聞こえた声。 男は驚き、 バッと勢いよく振り向いた。 その瞬間 ズバッ… 「……ぁ……ぁあ゛っ……!??」 胸に激痛が走った。 目線を上に向けたかったが、 恐怖のあまり、 己の胸もとから そらすことが出来ない。 サーっと風が吹き、 雲の間から月が出て、 徐々にあたりを照らしていく。 ブシュッ… 目の前の人物は、 男の胸に突っ込んだ腕を勢いよく抜いた。 ブシュー… 季節外れの紅色の桜が 空に艶やかに舞う… 男が最後に見たのは、 妖しく光る鋭い瞳と、 傾いていく視界に映った 血をこぼしたような緋色の三日月だった。 ,
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