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「ねぇ…?何で私だけ見ないの?」
そりゃ押田、お前だけ明らかに顔が崩れているからじゃないか?例えるなら、ラベンダー畑に一個だけジャガイモが置いてあるもんだ。そんなの誰も注目しないだろ。
その時だ。
『やんむこ』の到来を予期するように、一陣の風が俺達の間を吹き抜けた。
「来たぞっ!!」
いきなりの敵軍襲来に慌てることはなく、俺達は各々の配置についた。もうおわかりだろうが、今から向山を駆逐する作戦を開始する。
ここ数日間、無駄に過ごしていたわけじゃない。向山の行動パターンを読み、いつショーウインドウに現れるか分析済みだ。
あ、これ柳瀬の仕事ね。
俺は俺で、主演男優兼、監督兼、助監督兼、ディレクター兼、アシスタントとして、作戦に携わったわけ。
大丈夫、いつも通りにやればいい。そうすれば全て上手くいく。
声に出さずに祈る。
見慣れた巨駆がとぼとぼと歩いてくる。
今にも雨が降ってきそうな天候なので、通りに人は少なく、そのせいで余計に目立つ向山。まだ俺の存在に気付いてないようだが………。
とにもかくにも、作戦開始だ。
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