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「同感よ」
……あれ?こんなに素っ気ない性格の設定だっけ?これではツンデレ過ぎるぞ。
額に冷や汗をかき、俺はそっと理恵の手を繋いだ。
勿論、これは台本による演技である。下心も何もない行動なのだ。
だが。
瞬時に理恵の両眼が深紅の光を帯び、スラリと伸びた脚で、股関に装備されている俺のリーサルウェポンに一撃を見舞った。
「……っふぬ…!」
そう、男なら誰しもが経験したことであるだろう、あの激痛。鞭で叩かれるより、お相撲さんにビンタされるより強烈なペイン。
「あまり……調子に乗るなよ?」
まさに悪魔。小悪魔じゃねぇ、閻魔様。
悶絶する俺にそう吐き捨て、理恵はその場を後にした。
これはまずい。向山にラブラブっぷりを見せつけ、恋心を一刀両断する作戦が水泡に帰してしまう。
ケータイが震える。川崎からだ。
「なんだよ?」
『草島君、まだ大丈夫だよ。ターゲットはまだ茫然としてこっちを見ている。早く次の作戦に』
「へいへい」
どうやらまだ希望があるようだ。数十メートル先にいる向山に目もくれず、次の作戦の準備の為、俺は路地裏に隠れた。
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