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そういやメンバーに事前に言っておかなかったような気がしたが、この際そんなの関係ないんだよ。秘策というのは常に味方をも欺くのだ。
ミズキを抱き寄せる。予想外の行動にこいつは顔を真っ赤にし、フゴフゴ文句らしき言葉を口にしているが、知ったこっちゃない。以前にも抱きしめた記憶があるので気にするな。
そしてそのまま静止。
俺は待っていた。
―――――ヤツの突撃を。
「ウオォオォオー!!」
狼のような遠吠えがしたかと思うと、巨人向山がが走ってきていた。案の定、顔がとんでもないことになっている。
憤怒と悲壮感が入り雑じった形相で、さながら屏風に書かれた風神像といったところなのだが、風圧で顔がひきつっていて、もはやこの世の者とは思えない。
そして、止まった。俺達と向山の距離、僅か数メートル。
「大樹……!説明してもらおうかぁ!!何故こんなマネをしたのか!」
向山は声を荒げている。短気は損気だぞ。
「何がだ?俺はただこいつとデートしていただけだが、問題でもあんのか?」
しらばっくれても無駄だが、実行価値有り。相手は脳ミソが筋肉でできているので、あしからず。
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