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ミズキが愛を語ろうなんて、普段の様子からは考えられない。それほど革命的で、斬新な一言だった。
「君が愛と謳っているものは、『愛』ではない。ただ自己の感情を押しつけているだけだ……」
苦しそうに、一言一言絞り出すようにミズキが言う。
「君の奇行について、草島大樹から聞いたとき以来、私は『愛』についてずっと考えてきた。何せ私には無縁だと思っていた感情だ。本当は愛について頭を悩ませるだけで歯痒いがな。しかしな、ドラマを見たり小説を読んだりして勉強したよ。それなりに参考になったさ。愛は中々素晴らしい。他人を思いやる精神は甘美で誠実で崇高だ」
「それじゃ俺の行動も―――……」
「違う」
ミズキはキッと目の前にいる男を睨み付ける。
「それは違うんだよ、向山。他人を思いやるのが愛、この考え方自体が傲慢なんだ。それを草島大樹達が教えてくれた。彼と彼の仲間達と過ごした数日間が、教えてくれたんだ」
雨がポツポツと降りだした。だが構わず、ミズキは続ける。
「傲慢なんだ。愛なんて、そんなことを考えなくていいんだ。気がつけばそこにあるものなんだよ。向山、君の考えはただの傲慢に過ぎない」
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