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右側を一瞥すれば、そよ風になびく黒髪を押さえる理恵。
同様に左側には仁王立ちで強烈な眼光を放つミズキ。
「―――昨日再三に渡って言ったはずだ。その気が無いのなら、口出しする義務はないと」
「えぇ。でも女心と秋の空は変わりやすいっていうじゃない?一日寝たら、変わっちゃった」
事の始まりは、一通のメール。
いそいそと机の中身を鞄に押し込んでいる俺のポケットが微かに震え、それに気付き内容を確認した。
『屋上に来てくれ』
ただそれだけ。
移籍先が決まったばかりの居候(仮)からのメールだった。どうせ荷物を取りにこいとかっていう雑用云々だろ。全く……やれやれだぜ。
重たい足で36段を登りきり、ドアを開ける。
すると二人が対峙していたわけでして。
「ほお。じゃあ何だ?君は大樹のことが好きなのか?」
いきなり核心を突く言葉。
急激な展開に動揺しながらも俺は喉をゴクリと鳴らし、理恵の反応をいまかいまかと待っている。
「あ、の……それは……」
途端に照れ始めるな。徐々に顔真っ赤になるな。早く言ってくれよ理恵。
「だから私は―――……」
来る!
「ちょーいと待ったぁーっ!」
―――違うやつが。
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