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「君どこの中学から来た?俺は北部中学。ちなみに名前は向山良太。“良太”って呼んでね」
「わかった向山。じゃあね」
こういう男臭いやつには関わらないでおこう。
俺が目指すのはもっとピンク色のエデンだ。
「ちょ、ちょっと!せめて名前だけでも教えてよ」
五月蝿い。
「ごめんな。俺、男友達なんかいらねぇんだ」
心にもない台詞を吐き捨てまだ見慣れない玄関へ入る。
入学式は確かあと二時間後だ。
唖然としている向山を尻目に、俺は靴を揃え中に入っていく。
真新しい面子めいめいに声をかける、なんて大それた離れ業なぞ俺にはインポッシブルだ。
安い人形劇団の黒子役のような脇役でいいんですよね。
出る杭は打たれないをモットーに高校生活を送るはずだった。
ササッと素早く自分の席に着き、顔を隠すように机に突っ伏す。
こうやってれば、人形を巧みに操る黒子の虚しさも伝わるかなと思いながら、だんだん意識が遠退いていった。
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