入学、そして驚愕

3/11
前へ
/280ページ
次へ
「君どこの中学から来た?俺は北部中学。ちなみに名前は向山良太。“良太”って呼んでね」 「わかった向山。じゃあね」 こういう男臭いやつには関わらないでおこう。 俺が目指すのはもっとピンク色のエデンだ。 「ちょ、ちょっと!せめて名前だけでも教えてよ」 五月蝿い。 「ごめんな。俺、男友達なんかいらねぇんだ」 心にもない台詞を吐き捨てまだ見慣れない玄関へ入る。 入学式は確かあと二時間後だ。 唖然としている向山を尻目に、俺は靴を揃え中に入っていく。 真新しい面子めいめいに声をかける、なんて大それた離れ業なぞ俺にはインポッシブルだ。 安い人形劇団の黒子役のような脇役でいいんですよね。 出る杭は打たれないをモットーに高校生活を送るはずだった。 ササッと素早く自分の席に着き、顔を隠すように机に突っ伏す。 こうやってれば、人形を巧みに操る黒子の虚しさも伝わるかなと思いながら、だんだん意識が遠退いていった。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1519人が本棚に入れています
本棚に追加