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――あぁ、そいや柄にもなくドキドキして昨日眠れなかったんだっけ。
重たい瞼をこする。
気がつけば人がまばらにいた教室も無人化していた。
いや、訂正。
いた。
あのデカブツが、いた。
「やぁ。そろそろ君の名が聞きたいよ。教えてくれ」
とても直視できるとは思えないインチキ反爽やかスマイルを浮かべ向山は口を開いた。
「みんなはどこに行ったんだ?」
「入学式だよ。そうだな、今は式辞ってところかな」
「お前も行かないのか?」
なんかまともに会話している自分に腹が立つ。
「寝ている君一人置いてくわけにはいかないからさ。俺はジェントルマンだよ?」
知るか。付加疑問文とかいらねぇよ。
閑話休題。
ヤバいな。入学式に寝坊で遅刻って………。
「大丈夫さ。今からでもまだ間に合う。いや寧ろ、まだ互いに自己紹介する時間が残っている」
毛頭ないね。寝言は布団の中か墓の下で呟いてやがれ。
「………」
俺は無言で踵を返し、入学式進行中の体育館へ赴いた。
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