お嬢様の憂鬱

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お嬢様は、初めての血の洗礼の儀式を終えられ後ろにシートを倒し疲れたのか眠っていました。 「おやすみなさい、お嬢様。」 助手席で気持ち良さそうに眠るお嬢様の寝顔がとても可愛らしくて私は、微笑しました。 「貴女は、生まれたばかりの時に私と血で契約をしたのです。その時から私は貴女の物になってしまいました。だから、これからも貴女のお側にいさせて下さい。」 いくら私がお嬢様の事を想っても所詮は、契約をした主と従者の関係。それ以上何物にも変えられないのです。だから、せめて貴女の側でいる事をお許し下さい。嫌と言っても契約した限りは拒否権はありませんよ。 ~神園邸宅~ ガチャツ 「零央!遅かったじゃないか?」 「珠樹さん、申し訳ありません。手間取ってしまいました。」 「お嬢様は何処に?」 「私の背中で眠っていますよ。部屋にお運びしますから話は後で、聞きます。」 「…分かった。」 珠樹さんは、お嬢様の安否を気遣われ私の背中で眠っている姿を確認すると安心されたみたいです。 「零央さん、先程から牧師様がお見えになってます。」 「お嬢様をベッド迄運んでから牧師様にお会いしますよ。」 「はい。出し物はコーヒーでいいですか?」 「そうですね。頼みますよ、陸十さん。」 私は、執事とは言え全ての仕事に総括された役目をおった者なんです。多少頼りないですが皆さん優秀ですから助かっています。 キーッ バタン ファサッ 「…零央…、行かないで。怖いのは嫌だよ。一人にしないで。」 ベッドにお嬢様を寝かせて部屋から去ろうとしたら、起きてお嬢様は私の服の袖を掴みました。 「お嬢様、どうかなされたのですか?」 「零央が一緒じゃないと駄目なの。皆、黒くて大きな獣に喰われて死んじゃった…だから、怖いの…」 お嬢様の声は、怯えていらっしゃいました。そして、その声は幼い頃のお嬢様のものでした。そして、あの頃の悲劇を私に話されました。 「大丈夫ですよ。私はお嬢様の側でいますから。」 「本当に何処にも行かない?ママとパパは…いやあ~!」 嫌な記憶を思い出されたのかお嬢様は、過去と今の間で混乱されました。 「怖い物を見たのですね?お嬢様、貴女は今過去に戻られているのです。どうか今の貴女にお戻り下さい。」 「コクン…零央…おやすみなさい。」 「おやすみなさいませ、お嬢様。」 私は、お嬢様の額にキスをしました。
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