お嬢様の憂鬱

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お嬢様は、獣になった早水先生の前に立ちキュリアさんから守る姿勢を取られました。 「美夜、そこを退きなさい!」 「嫌よ。」 「…美…夜…済まない。緋色の月を見たばかりに狼に戻ってしまった。」 「獣から人間に戻り始めているの?」 「お願い、彼を殺さないで。私は、獣を退治してきたわ。でも、彼は悪い獣なんかじゃ…」 キュインッ! 「美夜、次は貴女を貫くわよ。」 「…いいわ!私は、彼を守る。」 バサバサッ お嬢様が、覚悟を決められた時に空から沢山の蝙蝠達がお嬢様と早水先生(狼)を包み込み何処かへ連れて行かれました。 「蝙蝠達が美夜と獣の早水先生を連れて行った?どうなってるのよ!」 「キュリア、仕留めそこなったみたいだな?」 キュリアさんとお嬢様の様子を影からみていたのは大柄の男性で、彼もまた夜の仕事の仲間でした。 「美夜の大切な人殺すつもりだったけど、邪魔が入ったのよ。」 「…殺すつもりでは無かったのではないのか?震えていたように見えたぞ。」 「美夜は、私の友達よ?獣を誘きだしたかったの。」 「キュリアも甘いな。」 「煩い!」 蝙蝠達に包み込まれ何処かへ辿り着いたお嬢様は、目の前の城をただ呆然と見ていました。 「お嬢様、どうぞ中へお入り下さいませ。」 蝙蝠達は集まると、黒い蝙蝠の中から一人の男性が現れました。 「その前に、獣になった彼を人に戻して。」 「今のお嬢様なら彼を人に戻す事が可能ですよ。貴女は、血の洗礼を受けられたのですからね?」 「どうしてその事を知っているの?」 「貴女と同じ吸血鬼だからですよ。」 吸血鬼…お嬢様と同じ種族の彼は笑顔でお嬢様と獣の早水先生を城の中へ通されました。 「美…夜…休ませてくれないか?」 「随分苦しそうね。」 「部屋を用意致しますよ。」 「ありがとう。」 城に入られてから、早水先生はここの空気に触れ体調を悪くされていたようです。 「美夜の声に誘われて外へ出た。そして、獣に…」 「血清を渡して零央と帰った後に獣になったのね?誰かが私の声を真似したとか…」 「そうかもしれないな…だが、獣になり人を襲ったのは事実だ。殺されていてもおかしくは無かった。」 「…助けて欲しく無かったって?」 「いや、感謝している。もう二度と獣に戻りたくないんだ。」 いつにもなく弱気な早水先生に、お嬢様は切なくなられました。 「弱い貴方は嫌いよ」
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