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ぼんやりと月を見上げ20分ほど経っただろうか。 「アーサー!こんなとこに居たのか!早く来い!」 突然現れたフランシスが叫んだ 「あ?ほっとけ」 お前らが菊をとったくせに。思いつつ目線だけ向けると。 「ちがうって!菊ちゃんが!ああもういいから早く来いよ!」 「アーサーさんじゃないと、や、です…」 「菊!」 宴会場の真ん中で、菊は座り込んで泣いていて。 驚いた俺は思わず叫んだ。 「アーサーさん!お会いしたかったです!」 !? 今まで泣いていたと思っていた菊は、俺の声にこちらを向くと、 すっと立ち上がり、こちらへかけて来ると、俺の腕に自ら飛び込んだ! これは夢か?まだ、手しか繋いだことないんだぞ!? いや、もちろんその先だってしたいけど!つーかむしろ突っ走りたい!! じゃなくて俺! 「菊、どうしたんだ?」 「ですから、アーサーさんに、とてもお会いしたかった、と申し上げたのです。 アーサーさんは、私と会いたくなかったでしょうか…」 俺のシャツはしっかりと握ったまま、胸に埋めていた顔だけをあげて、菊は少し拗ねたような口調で言った。 なんだこの可愛い生き物! 「あ、会いたかったに決まってるだろ!」 反射的に返して、ここは俺達だけではなかったと思い出す。 それに明らかに常とは違う菊のこと。 「おい!フランシスどういうことだ」 「やー、菊ちゃん酔っ払っちゃったみたいで」 フランシスが無責任に言うのを睨みつけると、何かが俺の頬をはさんだ。 「どうしてフランシスさんの方を向かれるんですか…私じゃ、アーサーさんには物足りないのでしょうか…?」 腕の中の菊が、両手で俺の頬を挟んで自分の方へ向け、俺を見つめていた。 「!?そんなわけないだろ!! 俺は菊さえいれば世界中敵に回してやる!」 しまった、ついうっかり本音が出た、と思ったが。 菊があまりにも幸せそうに笑うから、 本音とかそんなことよりも俺の理性が… 「嬉しいです…アーサーさん。 あの、それでしたら誓いのくちづけを、ここに頂けないでしょうか…」 !!! じっと見つめてくる潤んだ黒い瞳 着物の袷から覗く白い鎖骨 赤く色付いている唇 もう、だめだ……
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