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プロローグ
冷たい雨が降り注ぎ、道行く人は厚着を羽織っては肩を震わせ、口から漏れる白い吐息は霞となって空に消える。
そんな寒い冬の日に、新しい命が誕生しようとしていた。
石畳の道に響く雨音が、一つの民家から漏れ出る声をかきけしている。
ベッドの上で陣痛に苦しむ妊婦、その傍らには医者らしき男と助産婦らがいた。
「奥さん、頑張ってください。呼吸を整えて、あともう少しですよ」
妊婦を励ます医者。医者にしては若く、二十代前半ぐらいの歳だろうか。
医者の励ます声が繰り返され、それに呼応して妊婦が医者の言葉に反応して呼吸を整える。
しばらくして、赤ん坊の頭が出てきた。
「赤ちゃんが出てきましたよ。あともう少しです!」
医者の声が力強くなる。だが医者の励ましは、赤ん坊の上半身が出てきた辺りから消えた。
助産婦も医者も絶句した。部屋に響くのは妊婦の苦しむ声だけ。
やがてそれは全ての部分が母親と分かれた。
医者は若く、そこまで経験があるわけでもないが、それでもその赤ん坊は普通ではないことはすぐに分かった。
その赤ん坊は灰色の肌をしており、そして何よりも生まれたばかりで呼吸もしてるのに、産声をあげていなかった……。
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