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“彼”が生まれて八年の月日が流れようとしていた。普通の子供と同じように成長する彼。しかし町の人々は彼を遠ざけた。
『悪魔の子が生まれた』
町ではそう噂になった。
灰色の肌に真っ白の髪、燃えるような真っ赤な瞳。人外のその容姿はまさに異形の者として蔑まされた。彼は普通の人とは違う、それは彼自身も理解していた。
それは生まれながらにして町の人々から受ける差別によるものに他ならない。彼は嘆いた、何故自分だけがこのような扱いを受けなければならないのかと。
だがそれを口に出す必要はない。彼には聞こえるのだ、人々の心の声が。普通の人とは違う特別な力。人の心の声を聞くことができる能力のせいで、誰かとすれ違う度に言葉の槍が彼に突き刺さる。
『またあの“悪魔の子”かい。まったく、町から出て行かないものかね』
『あ~、やだやだ。気味が悪いったらありゃしない』
蔑むような視線とともに飛び込んでくる刃よりも鋭い言葉の棘。だがその力が特別に彼を傷つけたわけではない。それは何故か。簡単な話だ、町の人々の口から直接でる言葉と、心の言葉は大して変わらなかったからだ。
そんな彼にも心の支えはある。それが母親だ。悪魔の子と言われようと、悪魔の母と罵られようと、彼女は彼を心から愛した。
母親だけではない、ごく少数ではあるが彼をかばってくれる人もいる。彼と同い年の少女もその一人だ。
彼が苛められている時、少女は彼をかばうことがしばしばあった。少女の持つ正義感か、意味もなく虐げられている彼を見過ごせなかったのだろう。
しかし、彼にとってそれは嬉しいことではあったが、同時にとても辛いことでもあった。自分をかばったせいで悪魔の仲間と思われている事を、彼は特別な力のせいで知っていたからだ。
「もう僕にかまわないで。放っておいてよ!」
だから彼は少女を遠ざけた、自分のせいで少女まで嫌われものになって欲しくなかったから。
「そんなこと言ってると、いつまでたっても友達なんてできやしないわよ!」
そう言いつつも、少女は心の中では彼を心配してくれていた。少女の優しさが伝わる彼だからこそ、彼は少女と友達になるわけにはいかなかった。
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