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奴から逃げたかった私は、陽介とメールを繰り返す。
名前と声だけの人だった。
顔は覚えていなかったから。
陽介は私にとって救いの王子様のように感じられた。
奴しかいないと思うほど、私の心は疲弊し、精神的に病んでいきそうだったから。
陽介と2ヶ月ほど続いたとき、陽介に口説かれた。
私は正直うれしかったし、つきあいたいと思った。
仕事の休みは月に4回。
少ない休日。
趣味はバンドでライブ。
スタッフとして仲良くしていたバンドのライブにいったりして過ごす。
そのバンドのメンバーは今も活動しているから、知っている人は知っている。
雑誌にも載っていたりするから。
敢えて名前は挙げないが、その頃もそれなりにファンはいた。
私は個人的に興味はなかったけれど。
ファンにとってみれば、バンドをしている人は、どうやら芸能人と同じようなものらしく、声をかけることもできないらしい。
私にもファンをしていたバンドはあったけど、音楽というものが好きだった。
まわりにバンドをしている人は多かったし、スタッフをしてみると、バンメンが普通の男であることはよくわかる。
雑誌に載っているといってもインディーズ。
メジャーでない限り、コアなファンしかいない。
そういう彼らと遊んだり、ファンっぽく物々交換(普通は貢ぐかも?)をしてみたりしていた。
イコール、陽介も私にとっては普通の男だった。
音楽という共通の趣味を持っていただけ。
それを言うと、奴もギターをしていたし、バンドも組んでいた。
音楽の趣味も合ったし、友達という気持ちのままでいられれば、きっと淋しい気持ちもなかったのだろう。
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