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「理事長が俺に用って……」
星夜学園は初等部・中等部・高等部それぞれに校長が存在する。その校長たちと、学園が経営する星夜大学を総轄しているのが理事長である。
普段は姿を現さず、それぞれの校長たちに事務を任せている理事長。
だから夜一は理事長という存在さえ知らなかった。
顔も見たことがない人物に呼び出されるなんて、ちょっぴりドキドキする。
夜一の不安を読み取ったのか、教頭はあくまでも穏やかに囁く。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。私もさっき初めてお会いしたけど、気さくな方でね」
「教頭でさえさっきが初対面……?」
教頭の余計な一言がさらに夜一を煽る。
そんな方が自分に一体何の用があるのだろう。
全てにおいて普通で、平凡な自分。呼び出される要素なんて何一つない。
仮に退学処分を言い渡されるとしても、わざわざ理事長が来るだろうか。
校長が存在するのだから、その必要はない筈だ。
じゃあ何故?
疑問は益々募り、夜一は始終眉を寄せて考えていた。
理事長のせいで、夜一はいつの間にか朝の体験を忘れていた。
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