1253人が本棚に入れています
本棚に追加
教頭を見送ってから、理事長はソファーに座り、夜一にもそうするように促す。
夜一がおずおずと理事長の正面に座れば、理事長は優しい笑みを浮かべて言った。
「そんなに緊張しなくてもいいわよ。楽にして」
「は、はい……」
そう言われても緊張するものは緊張してしまう。
夜一は理事長の目を直視できなくて、キョロキョロと視線をさ迷わせた。
この理事長……若すぎないか……?
こんな時にどうでもいい疑問が頭を過る。
しかし、確かに理事長と言うには若すぎる年齢だった。
30代前半、いや、20代と言っても過言ではない程に若々しい。
中等部の校長の方が遥かに年老いている。
夜一の疑問を読み取ったのか、理事長はクスクス笑いながら自己紹介した。
「初めまして、銀夜一君。私は理事長代理を務める春風 日向(ハルカゼ ヒナタ)。突然呼び出してごめんなさいね」
あぁ、代理。道理で若い筈だ。
と、納得した夜一。しかしまだ不思議に思うことは山ほどある。
「……あの、何で俺を……?」
理事長が一呼吸置いてその質問に答えようとした時、校長室にノックの音が響いた。
最初のコメントを投稿しよう!