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校長室に入ってきたのは、手に缶コーヒーを持った校長だった。
この校長、一言で表すなら“ハゲデブ"である。
例えるなら豚がハゲのカツラを被っているような風貌。
脂っぽい額には、走って来たのか気持ち悪い汗が浮かんでいる。
「すみません、自販機に無糖コーヒーが無かったので……微糖にしました~」
ハンカチで汗を拭いながら校長が缶コーヒーを理事長に差し出す。
校長をパシリに…!?
夜一は信じられない、と言うように理事長を見る。
しかし理事長は笑顔を絶やさぬまま冷たい瞳だけを校長に向け、差し出されたコーヒーを受け取らない。
「あの、理事長……?」
「誰が……」
「へ?」
疲れて息を切らしている校長に、理事長は言う。
「誰が妥協していいなんて言ったのよ。自販機に無いなら、食堂に行って貰ってきなさい」
容赦ない言葉を当たり前のように校長にぶつける。
この理事長、かなり人を使い馴れているようだ。
容赦ない……理事長って鬼?
夜一が缶コーヒーを持ったままトボトボと出て行く校長の背中を見つめる。
理事長は全く罪悪感がないのか、しれっとしている。
そして表情を一転させ、また優しい笑顔で夜一に笑いかけるのだ。
変わり身の早さは天下一品。
そう感じた夜一だった。
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