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『お前、どこの組のモンや?』
河童の目がそう問いかけているように見え、夜一は震えながら頷く。
『さ、3年C組ですっ』
『よーし待っとれ。今からワイが殺りに行ったる』
アイコンタクトだけで随分高度な意思疎通を行う彼ら。
あくまで視線の会話なので確証は持てないが、おそらくそんな内容なのだろう。
夜一は一歩足を踏み出した河童を見て、自分も一歩後ずさる。
ジリ、と河童が一歩進む。
ズリ、と夜一が一歩退る。
それを数回繰り返し、とうとう痺れを切らした河童が走り出した。
それを見て、夜一も募らせていた恐怖を爆発させる。
「ぎ……ギャアアアアア!!」
誰もいない教室に夜一の絶叫が響き渡り、窓の向こうでは鳥たちがギャアギャアと飛び立っていった。
脱兎の如く教室を飛び出した夜一は、全力で廊下を走る。
「なんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだ!!」
目尻に涙を浮かべ、俯き加減に走る夜一。
疑問をそのまま叫びにかえて、大声で誰かに問う。
「なんなんだよ!あれー!??」
今しがた見た光景が目に焼き付いて離れない。
幻聴や幻覚とも思い難いし、何よりそんな言葉で片付けられるほど曖昧な映像ではなかった。
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