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そのせいで、夜一は気がつかなかった。
目の前に迫る人影に。
ドンッ!
「わぷっ!?」
俯いて走っていたのが仇となり、思い切り誰かに正面衝突してしまった。
夜一は顔面を強打し、尻餅をついた。
「痛ってぇ~~…」
「すまんな。大丈夫か?」
上から声が降ってきて、夜一が顔を上げる。
見れば、何とも端整な顔立ちの男子生徒が立っていた。
夜一は差し出された手を掴み、立ち上がる。
男子生徒は夜一の制服の汚れを祓い、乱れた髪まで直してくれた。
「ご、ごめん。全力疾走してて……」
「いや、いい。気にするな。こちらも不注意だった。それより腰を打たなかったか?平気か?」
確実に廊下を疾走していた夜一が悪いのに、男子生徒は大して気にしていないようだ。
それどころか、過剰な程夜一の体を心配している。
「腰は男の命だからな。悪くしては子が成せん」
「はぁ……」
朝っぱらから何を言ってるんだコイツ、と思いつつ、夜一はその男子生徒に再度謝ってその場を離れた。
変な奴、と聞こえないように呟いて。
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